リンパドレナージュは医療機関やリラクゼーションサロンで行われる施術のことです。
体に直接圧をかけてリンパの流れを促し、体に溜まった水分をはじめとする老廃物の排泄を促します。
最近では加齢によって筋肉が衰えた高齢者にも、心身をケアする方法のひとつとして、リンパドレナージュが注目されています。
リンパドレナージュは特別な資格がなくてもできる施術です。
しかし誤った方法で施術を行うと、返って老廃物が溜まりやすい状態になったり、体調を崩す原因にもなりかねません。
その為、施術を行うにも最低限度の知識と技術が必要です。
そこでこの記事では、リンパドレナージュとはどんなものか、公的な資格はあるのか、さらにリンパドレナージュの施術にあたって知っておくべき注意点についても解説します。
Contents
リンパドレナージュとは
リンパドレナージュは、リンパと呼ばれる体内の組織の流れを促すことで身体機能の向上やリラクゼーション効果に繋げる手技のことです。
具体的には人の手で体を直接揉んだり押したりすることでリンパの流れを活性化させ、体内に滞った老廃物の排泄の促進をサポートします。
なおリンパが流れるリンパ管は自ら収縮すると同時に、周辺の筋肉の助けも受けながらリンパを流しています。
そのため疲労や加齢が原因で筋肉が衰えるとリンパの流れが悪くなり、老廃物が溜まりやすくなります。
滞っているリンパに外から圧力を加えて老廃物を流すのが、リンパドレナージュの施術です。
リンパ液とは
リンパ液とは体液の一種です。
血管を流れる血液の大部分は心臓から押し出されて全身を巡り、再び心臓に戻りますが、一部の血液は血管から流出します。
この細胞の隅々まで酸素と栄養を届ける目的で血管から流出した血液の水分が、リンパ液です。
リンパの役割
リンパの体内における大きな役割は2つあります。
- 免疫機能
- 排泄機能
リンパは細菌や異物が体内に入り込むのを防ぐ免疫機能と、体内の老廃物を回収して運搬する排泄機能の2つを担っています。
風邪など病気にかかった際に、病院で首のあたりの触診を受けたことがあるのではないでしょうか。
これは体内に入り込んだ異物を取り込んだリンパが、首の部分にあるリンパ節でせき止められて腫れていないかどうか確認するために行われています。
リンパ節が腫れるということは体内で異物との戦いが繰り広げられているということにもなるます。
リンパドレナージュに期待できる効果
リンパドレナージュの施術を行って、滞っていたリンパの流れを促進すると、次のようなメリットが期待できます。
- むくみや肩こりの緩和
- 冷えの緩和
- リラックス効果
- 疲労回復
- 免疫力アップ
リンパドレナージュとリンパマッサージの違い
リンパドレナージュをリンパマッサージと表現することがありますが、施術内容はほぼ同じと考えて良いでしょう。
なおマッサージとは、体に触れたり揉んだりすることで血流を促したり、神経を沈めたりする行為を意味します。
ただし厳密にはマッサージは、あん摩マッサージ指圧師という国家資格を取得した人にしか行えません。
国家資格がない場合も体をもみほぐしたり、リンパや血流を促進するために体に刺激を加えるマッサージに似た施術を行うことはできます。
しかしその行為をマッサージと称してビジネスをした場合、法律に抵触することがあるため注意が必要です。
【ご紹介】
リンパドレナージュに資格は必要?
リンパドレナージュを行うために、特別な資格は必要ありません。
スキルさえあれば、自分自身の健康維持のためや周囲の人の体をほぐすために行っても構いません。
リンパドレナージュについて詳しく勉強して資格を取りたい場合は、民間団体が主催する資格を取得することも可能です。
資格には大きく分けて2種類あります。
医療用リンパドレナージュと美容用リンパドレナージュです。
医療用リンパドレナージュの資格
医療用リンパドレナージュに関する資格には次のようなものがあります。
- リンパ浮腫療法士資格(LT)
- 医療リンパドレナージセラピスト
- マニュアルリンパドレナージ(MLD)
医療機関でリンパドレナージュの施術を行う場合、上記のいずれかの資格を保有していることが応募条件になっているケースもあります。
医療用リンパドレナージュは、用手的リンパドレナージや医療徒手リンパドレナージと呼ばれることもあります。
主にがん手術後に起こる後遺症のひとつであるリンパ浮腫の解消を目的に用いられる施術です。そのため健康保険の適用が認められるケースがあります。
美容用リンパドレナージュの資格
美容用リンパドレナージュの資格には次のようなものがあります。
- オリエンタルリンパドレナージュセラピスト資格
- リンパケアセラピスト資格
- リンパリファインセラピスト資格
民間資格の多くは、教育機関で講座を受講することで資格取得試験を受験できるシステムです。
美容目的のリンパドレナージュは、リンパの流れを促してデトックス効果を期待するものですが、効果については施術受けた個人の主観に依存する部分が多分にあります。
リラクゼーション施術の一環という位置付けで認識するのがよいでしょう。
【参考】
リンパドレナージュの施術の注意点
心身の健康を促進することが期待できるリンパドレナージュですが、施術にあたっては注意しなければならない点が4つあります。
- リンパを流す方向
- 力を入れすぎない
- オイルやクリームを使う
- 体調が悪い時は施術しない
リンパを流す方向
リンパドレナージュの施術をする際は、体の末端からリンパ液節に向かう流れを必ず守ってください。
大きなリンパ節は鎖骨、脇の下、鼠径部にあります。そのため次のような方向で流すのが良いでしょう。
- 頭・顔・首→鎖骨(鎖骨上リンパ節)
- 腕・肩・腹部・背面→脇の下(腋窩リンパ節)
- 腰・下腹部・臀部・足→鼠径部(鼠径リンパ節)
リンパドレナージュの目的は、体内の各所に滞っている老廃物をリンパ節に届ける手助けをすることです。
逆方向に流すと老廃物が排泄されるのを邪魔することになり、体調不良を招く可能性もあります。
施術する際は、体の末端から各リンパ節への流れを守ってください。
力を入れすぎない
リンパ管は皮膚のすぐ下に走る細い血管です。
優しく撫でるように触れるだけで、十分圧がかかります。
リラクゼーションサロンなどの施術で強く押され慣れている人や筋肉が強張っている人は、強い圧を好む傾向が見られます。
しかしリンパドレナージュでは強く押してはいけません。
圧をかけすぎるとリンパ管を押し潰し、かえって老廃物が流れにくくなる恐れもあります。
また強い刺激は体にとってストレスです。
交感神経が活発になって血圧が上昇し筋肉が緊張状態になるため、より一層老廃物が流れにくくなる恐れもあります。
手の温もりと柔らかな圧で寄り添うイメージで施術してください。
オイルやクリームを使う
リンパドレナージュの施術をする際は、肌の滑りをよくするためにオイルやクリームを使用してください。
摩擦を軽減して肌への負担を軽減する効果が期待できます。
施術を受ける方の好みに合わせた香りや使用感のオイルやクリームを使用するのはいかがでしょうか。
リラックス効果を高め、施術の効果を最大限に発揮することができます。
体調が悪い時は施術しない
リンパドレナージュに限らず、体への施術は体調が万全な時に行ってください。
強い刺激を加えないリンパドレナージュであっても、老廃物の流れを人為的に操作することで体には少なからず負荷がかかります。
リンパの流れが促進されることで、血流量が急激に増加する可能性もあるでしょう。
万全の体調であれば、人の体に備わった恒常性が働いて、上手にバランスを取ることができます。
しかし体調を崩しているとバランス調整ができず、体調を崩すことも考えられます。
体のケアは体調が万全な時に、リラックスした状態で行ってください。
リンパドレナージュが活かせる現場
リンパドレナージュの施術は、医療現場やリラクゼーションサロンで主に行われてきました。
最近では活躍の場は拡大しており、介護施設でも活用されています。
年齢を重ねると筋力が低下し、老廃物が貯まりやすくなります。
そこでリンパ液を押し流すリンパドレナージュの施術を取り入れれば、体を楽にすることも可能です。
また施術者とコミュニケーションを取ることによって、さらなる心身の疲労回復も期待できます。
高齢化社会は加速しており、リンパドレナージュに対する需要はより一層高まることが期待できます。
スキルの一つとしてリンパドレナージュの技術を身につければ、自分自身や家族の体の辛さを緩和することも可能です。
まとめ
リンパドレナージュは撫でる程度の弱い圧を体に直接かけて、体の表面に近い部分を走るリンパ管内のリンパを流します。
習得すれば誰もが手軽に行いやすい施術です。
リンパを滞りなく流すためには筋肉のサポートが欠かせません。
そのため疲労や加齢によって筋力が衰えるとリンパが十分に流れなくなり、滞った老廃物の影響でむくみや疲労感が現れることがあります。
特に加齢によって筋力が衰えると、リンパを流す力も弱くなり老廃物が溜まりやすくなることから、高齢者を中心とする介護施設でリンパドレナージュのスキルの需要が高まっています。
リンパドレナージュは無資格でも施術可能です。
しかし人の体に影響を与える施術ですから、正しいスキルを身につけると安心です。
リンパドレナージュは通学や通信教育といった方法で学べます。
民間資格を取得することもできますから、就転職にも有益です。
自分自身や周りの人もケアするスキルの一つとして習得して損はないでしょう。
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